(1998年3月6日から) GigaHit
直接法と間接法

 日本語を教えるときでいえば、日本語だけを使って日本語を教えるのが「直接法」
韓国語のような、別の言葉を説明などに使って教えるのが「間接法」。
 間接法に使われる言葉のことを「媒介語」と呼んだりします。

 この二つの方法のどちらがいいかという問題については大変長い議論の歴史が
るようですから、私などの出る幕ではありません。どうしても知りたい方は、本屋さん
で日本語/外国語教授法の本を買って読んでください。ここでは、偉い先生がちょっ
と恥かしくて書けないような実情について触れることにします。

 日本で多国籍の留学生に教えるときには、媒介語を使いたくても使える媒介語が
なかったりします。この業界に無知な人は、ときおり、日本語を外国人に教えるとき
には英語を使うとばかり思っている人もいますが、そんなことをしたら、日本語教師
は、日本語を教える前に留学生たちに英語の特訓をしなければならなくなるでしょう。
そして、最大の問題は、英語は何語で教えればいいのかということです。

 私たちは、まず間違いなく自分の母語を直接法で教わっています。別に、「教える」
ほうは「教授法」を意識しているわけではありませんが。それと同じように教えようとい
うのが直接法の元になっている考え方です。

 でも、もしも、日本にある日本語学校の教授法が直接法である理由が、単に「媒介
語になる言葉がない」という消極的なものであれば、その意味はずいぶん違ったもの
になってしまうでしょう。

 一例を示すと、こんなことがあります。ほとんどの日本語学校が直接法をうたいなが
ら、実は、もっともよく使われている初級の教科書が、留学生向けではなくて、某国際
交流機関が海外研修生の教育のために作成した教科書であり、その教科書は、他の
どの教科書よりも各国語による翻訳と文法説明が完備しているという事実があります。
この教科書を使っている日本語学校の教師たちが、日本中で、年に何回となく、
 「どうしてこの教科書の語彙は、工場とか鋼板とかペンチとかハンマーとか、実習とか
 センターとか、そんなのばかりなのだろう」
と文句を言いながら、しかし、手放せないでいるのです。

 別の例を示すと、こんな教師もめずらしくはありません。私もそれに近いところがあっ
たことを正直に言わなければなりませんが、その教師は日本語だけで授業をしている
と思っています。しかし、そのクラスのほとんどは中国人で、教師は中国語を全くといっ
ていいほど知らないのですが、会話の中で新しい単語が出てくると、無意識のうちに必
ず漢字で板書していたのです。
 実際、そこまでひどくはないにしても、漢字圏の学生が多いクラスと英語圏の学生が
多いクラスで、どうしても授業に使う語彙が変わってきてしまうことは、どの日本語教師
も経験してきていることでしょう。もちろん、相手がわかる言葉を使って教えるのが教授
法の基本なのですからそれ自体は当たり前です。でも、それが教えたいことの道具とし
てならともかく、教える内容にまで及んでいたとしたら、問題です。

 以上のように、「直接法」と言っても、その中身はピンからきりまであります。私自身は、
韓国で教えていて、使おうと思えば媒介語が使える環境にいますが、ここに来て逆に、
自分の直接法での技量がまだまだだということを思い知らされています。それは、本当に
楽しくて身のある授業ができたときには、私も、クラスのみんなも、韓国語のことなんか
わすれて、日本語に熱中しているのがわかるからです。そんなふうになるのは、100回に
一回ぐらいのことですが。


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